【藝術は人生の必要無駄】

新型コロナウイルス感染拡大防止のため昨日4/16まで延長中だった確定申告。(実際にはそれ以上の延長になっている様ですが)今年も無事申告へ行ってきました。

大量の領収書の計算は毎度骨が折れるのですが、
整理している時に出てくるチケットを見るのは楽しみで、1年を振り返りながら毎年捨てる前に記念写真を撮っています。

友達や家族と出掛けたお芝居や旅行、学びの場、
Liveコンサート美術館や映画などなど…1枚1枚眺めながら感動やら興奮やら昨年あった色んな思い出に浸って幸せな気分に。

▲2019年出掛けた足跡

美術館やライブハウス、コンサートホールや劇場など三密と言われる文化施設は、今はほとんどがお休みに追い込まれていますし、チケットやグッズという形でしか残りません。でも、心の中にずっと豊かな栄養、宝物として残り続けていますし幸せな体験価値であり、人生の楽しみ、癒しと痛感しています。

私自身もナレーションという表現の仕事をしており表現者の生徒さんに教える機会も頂いている為、尚のこと、生のお芝居やLiveのインプットは欠かせないと考えています。

この事を改めて考えた時に、私がかつて勤務していた美術館の入り口に彫刻家・佐藤忠良先生が彫ってくださったある言葉を思い出しました。

【芸術は人生の必要無駄】


今のように有事の時は尚のこと、芸術は無駄なものだと捉えられがちですが、一見「無駄」に見える芸術が、人間の人生においてとても大切な「必要」なものだということを語る言葉です。そして、私自身も大好きな言葉です。そのことを分かりやすく説いている中学生向けの教科書に掲載された文章を紹介します。

▲かつて勤務していた宮城県の財団法人菅野美術館の入り口に刻まれた言葉です。

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美術を学ぶ人へ

美術を学ぶ前に、私が日ごろ思っていることを、
みなさんにお話します。というのは、みなさんは、自分のすることの意味ーなぜ美術を学ぶのかという意味を、きっと知りたがっているだろうと思うからです。私が考えてほしいというのは、科学と芸術のちがいと、その関係についてです。

みなさんは、すでにいろいろなことを知っているでしょうし、またこれからも学ぶでしょう。
それらの知識は、おおむね科学と呼ばれるものです。科学というのは、だれもがそうだと認められるものです。科学は、理科や数学のように自然科学と呼ばれるものだけではありません。
歴史や地理のように社会科学と呼ばれるものもあります。これらの科学をもとに発達した科学技術が、
私たちの日常生活の環境を変えていきます。
ただ、私たちの生活は、事実を知るだけでは成り立ちません。好きだとかきらいだとか、美しいとかみにくいとか、ものに対して感ずる心があります。
これは、だれもが同じに感ずるものではありません。しかし、こういった感ずる心は、人間が生きていくのにとても大切なものです。だれもが認める知識と同じに、どうしても必要なものです。

詩や音楽や美術や演劇ー芸術は、
こうした心が生み出したものだといえましょう。
この芸術というものは、科学技術とちがって、
環境を変えることはできないものです。
しかし、その環境に対する心を変えることはできるのです。詩や絵に感動した心は、環境にふりまわされるのではなく、自主的に環境に対面できるようになるのです。 ものを変えることのできないものなど、役に立たないむだなものだと思っている人もいるでしょう。
ところが、この直接役に立たないものが、
心のビタミンのようなもので、しらずしらずのうちに、私たちの心のなかで蓄積されて、感ずる心を育てるのです。人間が生きるためには、
知ることが大切です。同じように、感ずることが大事です。私は、みなさんの一人一人に、
ほんとうの喜び、悲しみ、怒りがどんなものかが
わかる人間になってもらいたいのです。
美術をしんけんに学んでください。
しんけんに学ばないと、感ずる心は育たないのです。

(「少年の美術」 1984年 現代美術社)
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自粛制限が全国に広がり且つ暫く続きそうですが、心が塞ぎがちなこうした有事の時こそ芸術や文化に触れる機会、アーティストの生の表現に触れることが人生には必要な体験だと改めて痛感させられています。友人のアーティスト達の活動が次々休止に追い込まれているのも心配ですが、いつかまたLiveで生の歌声や芝居に触れさせて頂くのを切望しています。でも、ピンチはチャンス。全てを肥やしに出来るアーティストたちにとっては心の栄養をじっくり育てる大きなチャンスと言えるのかも知れません。

また、表現を仕事にしていなくても誰もに内在するクリエイティブなリソースを開花させるべく…今のようにおうちで過ごす時間に読書、映画鑑賞、料理や工作などそれぞれが自分の好きな創作活動を通じておうちアーティスト活動や能力開発に勤しむのも楽しいかもしれません。

また出掛けられる日を楽しみに今を穏やかに心豊かに過ごしていきたいですね。