学びの日々

〜声優が読むナレーション、
ナレーターが読むナレーションの違い〜
VOやセリフなど語りの幅を広げる為に
今年入学したプロ声優の為のプロクラス。
ニュース情報番組をベースに
昨年からドキュメンタリーも読ませて頂くようになり
様々な語りを求められるようになった危機感から
かねてからの課題解消のため、通う決断をしました。
コロナ禍でもあり、オーディションも授業も
例年とは異なり
対策を万全にした特殊なものです。
でも思い切って入学して本当に良かったです。

ナレーターの居ない教室でもあり、
様々な作品に出演する
プロ声優さんの芝居を間近で見る事ができ、
いい意味で毎週カルチャーショックを受けてばかりですが、この原稿もそのひとつです。
医療用VTRの語り原稿。     

ナレーターの語りでは、
「第三者の」「ストーリーテイラー」
の立場で「自分自身」が語るのですが、
声優のそれは「ストーリーの中に入り込み同化し」
「その役柄、キャラクター」が
「その役の性格や感情で」
伝える点が全く違うところ。
(もっと言うならば、
ナレーターやアナウンサーは
意味の繋がりや分かりやすさ伝わりやすさ
日本語の正確性と滑舌を意識して
言葉と文脈、意味重視で伝える傾向があり、
一方、声優は、声質の良さや個性・キャラクター
芝居の構成や役柄の心の機微などをより意識して
滑舌や明瞭さよりも雰囲気やトーン、感情を効果的に伝えているという違いがあるように感じます)
良い悪い、優劣の差ではなく
特徴の差であり好みの問題ですが
可能なら両方が出来て
必要に応じて必要なスキルを使い分けられたら
最高だと思います。

ナレーターはアナウンサーと声優の中間の仕事。アナウンスに色味をもたせながらより言葉の力(母音の強さ、訴求力)を重視するように思います。なので良い語りには両方が不可欠になります。

ちなみに、声優さんが読むこの原稿の場合も、一つの原稿を
20代女性MC、30代後半ナレーター、
50代半ば大学教授の役柄で喋り分けるもので、
同じように企業案件や
硬く正確なジャンルのお仕事でも
ナレーターが同様の医療用VTRや株主総会などの
企業の決議事項や決算報告などについて
語る際に要求される内容とも全然違っています。

また、原則、質問も許されず、
アクセントだけでなく専門用語についても
10分以内に自分で調べて解決する事、
クリアな滑舌を担保した上で
3人分の役を演じ分け、
三回噛んだらアウトで有無を言わさず失格。
次の人にチャンスが回るという
ルールも驚きでした。
 

本当に上手な人なら真っ新の原稿で
一回で完璧に読むのだと思いますが、
(私の師匠と職場の同僚の方は典型的なこのタイプ)
私は不器用で心配症で
どの原稿も書き込んで仕事が終わるたびに
赤や青様々なインクで手が思い切り汚れるタイプ
そして、最善を尽くそうと書き込んで
声を出して下読みをし
一生懸命やっても
うまくいかったときの無念さ。(;o;)
 

新しい学校に行って今更何を得られるのかと
迷ったこともあったのですが、
まだまだやるべき事がある、
できる事がある、
びっくりするほど美声な人たちがいる
演技の上手な人たち、
ひたむきにチャレンジする若い人が沢山いる、、
そんなカルチャーショックの洗礼を
受け続ける事が成長のために最も必要な事。 
また、広い世界に触れる事で
これほど沢山の才能が溢れる世の中において、
今現在、すでに様々な欠点も含めて
こんな自分を信用し、可能性にかけ
キャスティングして下さっている方々や
現場への感謝、有り難みもより深く湧いてきます。
涙が出るほど有難いと思っています。。
 

だから薄皮一枚ずつ、牛歩で良いから
古い自分を壊して新しい表現力を開発していきたい〜
成長して様々な人に恩返ししたい、
そう思う、今日この頃です。

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